「トガの民」の少年・ケイは、息苦しさと孤独から居場所を求めて島を脱出、央国への不法入国を果たす。
だが央国には、島以上に過酷な現実があるだけだった。
虫螻同然に扱われる「トガの民」の名誉を回復すべく、央国の闇に立ち向かう!

物語全体のあらすじ


ー星歴2200年


「螺旋の巨塔」と呼ばれる央国の豊かな社会は、深海由来の生命体「星虫」の分泌液を燃料にして稼働する、炉心の恩恵で成り立っている。人体には猛毒であるその分泌液を採取・管理するのは、驚異的な再生力と免疫力を持つ少数民族「トガの民」だ。彼らトガは国の実権を巡り長らくヒトと争ってきたが、過激派トガによる大量虐殺事件をきっかけに穏健派との内部分裂の末、敗北。自治領に小島を与えられたものの、今やトガはヒトの奴隷・社会の燃料として虫螻同然の扱いを強いられていたー




自治領で唯一ヒトの里親を持つトガの少年・ケイは、島民からの疎外と親の厳しい教育を受け、孤独と息苦しさを抱えながら生きてきた。そんな彼の唯一の楽しみは、央国からの定期船に乗りやってくる旅芸人の青年・リシと会うこと。都市部を夢見て日々を送るうち17歳になり、島の掟である「改命の儀」ー今後生きるに相応しい命かどうかを見定める儀式ーを迎えることに。だがその前夜、島民達が「儀式に扮してケイを殺す」と取り決めているのを聞いてしまったケイは、憧れの央国へ不法入国するという賭けに出る。


国への定期船に積み込むコンテナに隠れることで入国を果たしたケイは、自身をヒトと偽り酒場で働くことに。だが現実の都市部生活は理想と程遠く、トガへの厳しい迫害を目の当たりにする。


ある日、仲の良い同僚・ハスが逮捕された。車に轢かれそうになったケイを庇ったところ、彼女の怪我が瞬時に再生しトガだと発覚。被害者であるにも関わらず運転手の男に慰謝料を請求される。


ハスに恩義を感じていたケイは、彼女を助けるべく以前出会った「なんでも屋」のラヴァウカと協力し、男の身辺を調べた。すると男は十五年前に起きた第二次ヒト虐殺事件の被害者の会を取り仕切っていること、そして被害者の会に集まる寄付金の大半を自らの懐に入れていることがわかった。


集めた証拠を公に晒したことで、男に対しヒトからの反感を買わせることができ、ハスは無事釈放される。

だが男は逮捕に至らず、第二次虐殺事件に関する謎も深まっていく。当該事件は央府中枢院からの命令により捜査を打ち切られていたのだ。ケイらが事件について詳しく調べていくと、数少ない生存者に「リシ」の名前を見つけ、更に犯人が「ケイ」だと知る。不可解なことに「ケイ」の容姿は、今のケイと酷似する少年だった。



トガに対してあらゆる権利が無視される央国。トガの名誉回復には第二次虐殺事件の真相が鍵となる。

ケイはハス、ラヴァウカと共に央国の闇へと足を踏み入れるのだった。