最後の展開に思わず息を呑みました。苦しくて、痛くて、呼吸が思うように上手く出来なくて。ただただ忙しく時間が流れていく、あまりに惨い青春を優しく掬うことに必死で、いつの間にか彼らに感情移入をしていました。彼らが悲しめば私も辛くなり、彼らが笑い合えば私も穏やかな気持ちになれる。読者の私をも巻き込むその温かい言葉たちに虜になるのも時間の問題でした。
《完》の文字が目に映った時、幸せな溜息が漏れて。ずっと止めていた息を煌めきで溢れた世界に深く吐き出せて。爽やかな空気が胸をいっぱいに満たしていくような心地が堪らなく好きでした。ああ、なんて美しい夢を見届けられたのだろう、と今は最高に晴れやかな気分に浸れています。今日拝読し始めて、あまりの展開の面白さにページを捲る指が止まらなかった。そして我武者羅に彼らの幸せを願っている自分がいた。どうか、この脆い奇跡が続いてくれますように、と。
彩葉と凪沙の等身大の青春を肌で感じて、二人には、そっと背中を押してもらえたような気がしています。私では思いつかないような深い視点には何度も脱帽した。どうしようもないすれ違いとは対照的に絡む想いを知り、シビアなこの現実にも、どこかに必ず希望がある、という無言のメッセージに心を打たれました。
キャラクター一人一人の名前が本当に可愛くて、ついつい口ずさんでしまう。美味しそうなスイーツが脳裏に浮かぶ、描写の麗しさには感嘆の溜め息が零れ落ちる。そんなところも本作品の魅力の一つだと感じています。
『ここにいてごめんなさい……』
こんなに胸が締め付けられる言葉はあるかと、咽び泣きそうになりました。別に謝る必要性なんてないのに。でも、追い詰められた人には、誰かの目に映りたい、誰かに認められたい、という気持ちが先走り、空回りしてしまう。そしてまた、そんな自分に嫌気がさす。自己嫌悪と劣等感の連続、悪のスパイラル。けれど、意外と手を伸ばせば、誰かがその手を掴んで、上へ持ち上げてくれる。少しだけ、信じても良いんだよ。案外、世の中悪くないよ。そんな輝いたエールで詰まっていました。私も、海を照らす日光になりたい。いつしかその感情が自分の中で芽生えていくのを実感しました。
特に私の心を強く揺さぶったのは、星のお話です。星の光は考えるだけで気が遠くなるほどの長い時間をかけて私たちの瞳に届く。そこから、彩葉は『奇跡が毎日起きている』と言った。なんて素敵な発想なのだろう、と私の心を一瞬で鷲掴みにしました。綺麗ごとかもしれない。けれど、それを信じてみたほうが人生に彩りが増える気がして。毎日、大小問わず、どこかで奇跡が起きているのだとしたら、意外と楽しく日々を送れそうな気がしました。
『たとえこの夢が醒めたとしても。』この題名には続きがあった。『ふたりで幸せな未来を創っていこうね』それは目頭が熱くなるほど美しくて仕方がない、そんな柔らかな光で満ちていた。きっと、彩葉の決意の表れ。ラストのどんでん返しには裏切られたけれど、夢が醒めても、真っすぐ歩んでいく二つの大きな背中を見せてもらえた気がして、心が躍った瞬間でもありました。
ねえ、彩葉、凪沙。たとえこれから先、どんなことがあっても。私は私で自分の道を切り拓いていこうと思うよ。そう思わせてくれてありがとう。これからも、二人の世界を私に見せてね。ずっとずっと応援しています。
素敵な作品をありがとうございました。