世界は1つだけしか存在しないと誰が決めたのだろう。
 世界の100や200、神様ならストックしておいても不思議ではない。
 量産された数ある世界の中から、より優れた世界だけが神様に愛され、私たちは失敗作の世界に生まれ堕ちてしまったのではないか。
 私たちの世界はとっくに神様に見放され、廃棄された…

【物語全体のあらすじ】



 世界は1つだけしか存在しないと誰が決めたのだろう。

 世界の100や200、神様ならストックしておいても不思議ではない。

 量産された数ある世界の中から、より優れた世界だけが神様に愛され、私たちは失敗作の世界に生まれ堕ちてしまったのではないか。

 私たちの世界はとっくに神様に見放され、廃棄された試験管の中で繁殖する、カビのような存在に過ぎないのかもしれない――。


 日本によく似た風土の島国。かつて大海の向こうにあったはずの国々は、半世紀近く前に現れた瘴気の壁によって隔たれてしまった。


 瘴気に囲まれ、いつ終わるかもわからない世界の片隅――瘴気の壁と共にどこからともなく現れた生物『霊獣』と共に文明を維持し、人々は生き延びていた。


 霊獣は、獣形態、武器形態に変化へんげすることができる生物である。獣の姿は狐に近い。

 個々の持つ能力によって武器の姿は様々だが、多くの霊獣は刀となって人間の精神と同調することで戦闘能力を飛躍させる。霊獣を扱い戦う者たちを成獣士と呼び、霊獣は成獣士同士の戦いで生じるエネルギーを糧にする、半不老不死の種族である。


  霊獣が武器として戦うことは、『聖獣』になるための修行とされている。聖獣になることで初めて、瘴気から潤沢なエネルギーを抽出できる神技を取得できる。また、瘴気を中和する一助にもなるのではないかという希望もある。優秀な成獣士の育成が急務と言われ、エネルギーの枯渇が問題視されている。


 国には半獣差別という根深い問題も存在している。『半獣』とは、人間と霊獣の混血児を指す。今では霊獣を神聖視する者も多く、半獣であることは忌避の対象になりやすい。何故なら、霊獣は人間と交わるとその命を終えてしまうからだ。


 霊獣は限られた人間しか選ばないとされているが、その基準は明らかになっていない。霊獣に不貞を働くような輩は奇病で死ぬという都市伝説がある。


半獣がより忌避されるは理由は他にもある。半獣は、霊獣を武器として支配することができる。お互いに血を求める殺戮本能を刺激しあい、タガが外れたように戦いを求めるようになる。


人間の成獣士ならば霊獣からの制限が充分に働くが、半獣はその制限を受けない。互いの血が働きかけることによって並外れた戦闘能力を引き出すことができるが、内に抱えた殺戮衝動をいつ刺激されるか、その時に自制できるものは少ない。


半世紀ほど昔に、とある半獣がエネルギーの抽出に成功したが、同時に厄災をもたらした。以来、霊獣を血で汚すことはタブーとされ、半獣は厄災の象徴となってしまった。


現在では、成獣士同士の競技試合『演武』が修行の一貫として励行されるようになった。かつて半獣が試した方法よりも効率は悪いとされているが、多くの犠牲を生むことはない。


霊獣が戦争の道具として扱われることはなくなっていった現在——。


半獣の青年は、過去の記憶を失った霊獣と出会い、成獣士としての道を切り開いていく——。