ダストとブレイクは年の離れた孤児の兄弟だ。
文明の衰退した世界で、出来る仕事は何でも請け負って2人で生きている。
弟を守ることしか頭にない兄と、大好きな兄と食べ物と酒にしか興味のない弟。

彼らは最近ちらほら、妙な困りごとの話を聞くようになった。
置物の紛失事件が、何件も続いている。
金にもならな…

ダストとブレイクは年の離れた兄弟だ。本人たちは5歳差くらいだと思っている。

ブレイクは珍しく親の記憶を持つ孤児で、小さいダストを助けた時に、自分の弟にすることを決めた。ダストは血が繋がっていないことは知っているが、それを気にしたことはない。


彼らの住む都市は、鉄板とパイプと木で出来ている。高層建築もまだ残っているが、それが崩れたら再建する技術はもうない。

過去に何かがあって文明が衰退したらしいが、それを覚えている人物も記録ももうない。

分かっていることは人間は以前より変異していて、今現在生き残っているのはたまたま強い免疫を持っていた人間の子孫ということ。人々はそれぞれにちょっとした能力や、異形さを持っているが、千差万別で分類も出来ない。


頭の良いブレイクと、力の強いダストは良い組み合わせで、どんなことでも請け負ってその日を生き抜いている。銃というものが海の向こうでは復刻されたらしいが、こちらの世界にはまだ大した品物がない。それに似せたものを入手して、武器になるかと腕を磨く日々。


最近ちらほら、妙な困りごとの話を聞くようになった。

置物の紛失事件が、何件も続いている。大して高いものではない、どれも海の向こう、大陸産だということだけが共通点だ。

金にもならない、そんなものを取っているやつがいる?

ダストは興味を惹かれた。


ブレイクはある夜、朽ちた高層ビルの上を走る人影を見かける。あんな高さ、落ちたらもちろん命はない。

ありゃ何だ? と思いながら帰宅すると、またあの窃盗犯が出たとのこと。

一つ一つは小さな事件だが、数が集まれば依頼になるか?

ダストの主張を容れ、2人は「空中ランナー」を追うこととした。


兄と、美味しい食べ物と酒にしか興味のなかったダストは知らなかった。

自分の追っているランナーが、美しい若い男性で。

自分は彼を捕まえるどころか、ひとめぼれをしてしまうということを。