夢の中で自由自在に力を振るうことができるという特別な能力を持って生まれた者は、人々を邪悪な夢から守るという使命があった。それが夢の管理人。高校生の椿は夢の管理人だった。孤独に淡々と悪夢と対峙する。ある日、夢の世界に変化が起こった。謎の物体:虹色のプリズムを放つ立方体が出現したのだ。それと時を同じく…

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人は眠るときに夢を見る。

夢の中で「この場所どこかで見たことある」「あの風景あそこに似てる」という直感は実は間違っていない。

人間の意識は眠っている間、実際にその場所を訪れているのだ。場所は実在・非実在を問わない。《夢世界》には関係なく在るからだ。人は場所を夢見て、場所は人に夢見さす。


《夢世界》で自由に生きられる少女、椿はその力を持っているがために、ある使命を負っていた。彼女は夢と現実の均衡が崩れないように、そして夢が誰かを殺さないように目を見張らせる「夢の管理人」。


場所は基本的に夢を見させるだけだ。しかし、時に有害な夢を生み出してしまう。その原因はある人間がその場所に強い呪いを宿したり、全く未知の要因だったりと様々だが、夢の管理人が対処しなければ、人の心が狂ってしまう。最悪の場合、命が奪われてしまう恐ろしい世界なのだ。


椿は夜な夜な夢の世界を巡回する。


自分の力には幼い頃から気づいていた。自分の使命を悟ったのは、夢で自分と同じ力を持つ女性と出会ったからだ。その女性と現実の世界で待ち合わせ、語り合い、夢世界の仕組みと自分の力について知った。しかし、女性はある日突然姿をくらます。彼女はこう言っていた。


「わたしたちは気づかれると連れて行かれてしまうの」


夢の管理は人類のために遥か昔から脈々と受け継がれていた。現在に到るまでその営みを秘匿し続けられたはずもなく、彼らの能力について研究する機関が存在する。夢の管理人の能力を持つことがバレてしまうと、実験体として研究組織に連れ去られてしまう。そのリスクを避けるために夢の管理人同士は決して話しかけず、知り合わず、馴れ合わない。淡々と日々の使命を果たすだけ。


だがしかし、今夜は違った。

悪夢との戦いを終えた後、ふと視線を感じて振り向くと、椿と同い年くらいの少年が佇んでいた。彼は椿に突然こう告げる。


「手伝ってほしい」


       *   *   *   *   *


とある寂れた神社の内側に異空間が生まれた。外からは何の変哲もなく感知できないが、その空間に踏み込むと、一面が虹色の異空間が顕現する。

椿と同じ高校に通うミサは、趣味で探偵業をやっていた。近所の地主が所有する古文書の解読の依頼を任された彼女は調査の最中に偶然その異空間を発見する。

ミサはクラスの秀才とコンビを組んで異空間の研究を始めた。


       *   *   *   *   *


その少年はヨルと名乗った。

彼は夢世界にお気に入りの場所があってよくそこにいた。その場所のことを知り尽くしていた。最近、その場所に宿る「イデア」に何らかの変質が起きていることに気づいた。そしてそれはそこだけでなく他の場所でも起こっているらしい。

しかし、夢世界の場所と現実世界の場所はリンクしている時もあればそうでない時もある。そもそも夢世界は非現実の場所も存在しているし、さらに夢世界の位置関係と現実世界の位置関係は対応していない。

その場所に一体何が起こっているのか調べたいが、夢世界の場所が現実世界のどこにあるのか見当がつかないので、その場所を探すのを椿にも手伝ってほしいのだという。