科学技術が限界を迎えてから魔法が発見され、日常生活に組み込まれた世界。
 日々起こる魔法犯罪の中でも魔法テロリズム対策に特化した部隊に所属する相良叡と若宮彌津葵は新人ながらも日々奮闘していた。
 そんな日々の中で麒麟党という過激派集団が現れる。神出鬼没の麒麟党とそれを未然に防ぐために奔走する2人…

物語全体のあらすじ


 科学技術が限界に達し低迷を迎えた世界に訪れたのは、終焉ではなくまさかの魔法の出現だった。

 空想の産物だと思われていたそれは各地で現象が確認されていき、未開拓の領域にそれまで無用の長物と言われた研究者たちの心は踊った。

 魔法ってのは術式というくらいだから特に理系とは相性が良かったのだ。

 目ぼしい文献も残されておらず手探りだったためいくつかの事件、事故を繰り返しながらも、人々は魔法を研究し、発展させてきた。今では省庁には魔法省、大学には魔法学部が設置され、小学校から基礎的な知識は教えられるようにまで制度が整ってきたほどである。

 そんな魔法時代黎明期の終わりには、人は人口の約6割が生まれつき魔法を使えるようになっていた。これも人間の進化の1つなのだろう。

 魔法と言っても第六感が働いて自然界の原理をより理解できるようになれば為せる術のことだから理論的には全員が使える筈のものではあるが、その能力が開花しているかというのが生まれつき魔法の使えるか否かを意味しているのが現状だ。

 しかし、生まれた時は魔法を使えなかった人も、のちの教育過程で大抵が使えるようになる。ただ生来使える人よりは劣る場合が多い。また、どうしても使えないままの人もいる。

 そういった人でもその鬱憤を研究に昇華し研究者として名を馳せている人も少数いるが、多くが社会不適合者のレッテルを貼られてしまい生きづらさを感じている世の中である。そして、何人かは理不尽な社会に反抗しようと徒党を組んでいる。文治派もいるが、やはり目立っているのは武力派の過激な集団である。テロまがいのこともしでかすので危険視されていた。

 そういった集団を取り締まるため設置されたのが魔法省魔法警察庁警備局魔法テロリズム対策課である。そこに所属する相良叡と若宮彌津葵は新人ながらも有能で一目を置かれていた。

 特に彌津葵はいわゆる「天才」で、その能力は桁違い。

 魔法テロリズムにおいて極めて厄介なのはそのような天才が悪者側に回ることだった。天才が故に理解されず、道を外れた人間が過激派集団にいることが確認されている。

 過激派集団の中でも近頃めきめきと勢力を伸ばしているのは『麒麟党』と名乗る集団だった。

 かなり大規模な事件を起こすものの非常に狡猾でいまだに先んじてしっぽを掴むこともできていない。その上対策課でも構成部員や幹部格といった全貌を把握できていない。後手に回らねばならぬほどに、麒麟党には手を焼いていた。

 さまざまな事件に関わる中で2人はその麒麟党の主導者・りんと接触し、彼もまた「天才」と言われるような人物であることを知る。

 2人は彼の最終計画である首都の大規模破壊を阻止することができるのか……!?

 理不尽で不完全な世の中で生きる彼らが、多くの葛藤と出会いの中で生きる道を見つけるまでの物語。