役所仕事は選ばない―英雄ミーツ児童福祉課―

作者せっけん

舞台は近未来の日本。18年前に突如出現した「化け物イオン」と呼ばれる人機共通ウイルスにより、精密機械は使用不可能になり、野生動物は突然変異で強大な超能力を手に入れた。人類の生活は江戸時代以前まで衰退したが、ウイルスに適応し「先史帰り」と呼ばれる超能力を手に入れた人間は「武士」や「陰陽師」を名乗り、…

舞台は近未来の日本。18年前に突如出現した「化け物イオン」と呼ばれる人機共通ウイルスにより、精密機械は使用不可能になり、野生動物は突然変異で強大な超能力を手に入れた。人類の生活は江戸時代以前まで衰退したが、ウイルスに適応し「先史帰り」と呼ばれる超能力を手に入れた人間は「武士」や「陰陽師」を名乗り、世界を野生動物から取り戻すべく戦っていた。誰もが英雄を目指す時代の中、たった一人で「江戸児童福祉課」で働く青年・栂村は「子供の権利」を守ろうと奮闘する。


そんな栂村の元に、「新時代の英雄」と呼ばれつつも「ただの学生でいたい」と嘆く中学生男子・阿愛遠地が保護されてくる。遠地は「先史帰り」による超能力を弱体・無効化させる「科学史眼」という能力を持ち、それ故に武士陰陽師両陣営から「英雄になれ」と強制的な勧誘を受け苦しんでいた。栂村は遠地を救うべく、英雄を求める江戸のすべてを敵に回す「平凡生活奪還作戦」を目論む。


「英雄にも子供らしい生活を送ってほしい」と願う栂村と、悩みながら「英雄ではなく小市民として街を守りたい」と願う遠地の在り方は、英雄至上主義の江戸に確かな変革をもたらしていく。