「俺」と「僕」は、一文字違いの大違いだ。
俺――海野月は、常に集団で行動し周りに流される隠れたバレエダンサー。
僕――天野月は、常に一人で行動し自らの道を進む有名ピアニスト。
彼らは同じ学校、同じ学年でありながら、少しも関わることなく高校生活を送っていた。
しかし三年生の初夏、雨上がりの月の下で彼らの関係は急変する。
「無個性」を強いられたその月は、唯一の才能を持っていた。