最初の10ページで死んでしまう令嬢に転生したレネーは、自分が死ぬ運命を変えようとはせずに好き勝手に生きていた。
そんな彼女はある日突然、親に絶縁宣言をされてしまう。
絶縁を乗り切る条件は自分の家より格上の家の人間と婚約すること。しかし、別にそんなことは彼女には関係なし。
努力もせずにのびのびと暮ら…

10

 少女に当たった雨粒を皮切りに、雨は激しくなっていく。ユーグは雨を避けようとはしなかった。立ち尽くして、何もできなかったのだ。

 ユーグは手を伸ばした。それは確認の仕草だった。

 今、少女が目の前でガラス像になったことが本当であるか確かめるためだ。

 触ってユーグは少女から離れる。

 頬をなぞった指はつかえることなく、滑り落ちていく。雫の滴る像の肌は水のついたガラスそのものの触り心地だったのだ。

「……」

 ユーグは認めざるをえなかった。

 自分をユーグと呼んだ、自分のことを知っているらしい、自分は名前すらも知らない彼女は、ガラス像になって動かなくなってしまったことを。