「謝りたかったんだ。今までのこと。……二年前から、ずっと」
海辺の町で暮らす俊貴の元へ、二つ年上の幼馴染・灯莉が二年ぶりにやって来た。
バスケットいっぱいのサンドイッチと、大学の合格通知書を持って。
捨てられない初恋に苦しむ、片思いの物語。
※タイトルは『みぎわのあかり』と読みます。

僕を見上げた灯莉の髪とカーディガンが、潮風を孕んで膨らんだ。二つ年上の幼馴染は、大人の顔をして笑っていた。汀に波が打ち寄せると、引き千切られた真珠のネックレスみたいに飛沫が弾け、海と日向の匂いが強くなる。白昼夢のようなビジョンがその時、瞳の中をさっと魚のように泳いでいった。五歳と七歳だった頃の僕らが、手を繋いで砂浜を駆けていく。無邪気で、楽しげで、甲高い声で笑い合って、サンドイッチを握りしめて、灯台を目指して駆けていく。