今宵、あの藤の下にて君を待つ。

作者月音

唐棣(はねず)家の庭に植えられた一本の藤が「鬼憑き」と呼ばれているわけは、枯れることなく年中花を咲かせることと、藤の下に緋色の目をした鬼がいると噂されているからだ。
けれども一人娘の薄紅(うすべに)が藤に癒やされ病を克服した為、当主の蘇芳(すおう)も藤を無下に扱うことは出来ないでいた。

薄紅の前…

今宵藤


表紙絵・青造花様