付き纏い男に顔を斬られ傷跡がある繭子。裕福な父が亡くなり負債を抱える。返済のため小樽の商家に奉公に出る。倉庫の運搬の力仕事だが繭子は務める。そんな繭子は仕事で評価され、社長で冷酷無比な青山静也に認められてしまう。愛を知らずお金しか信用していない彼は、純粋な繭子に惹かれていく。

   「お前も、どうせ金目当てであろう?」

   「そんなことは」

   「ない、と言い聞かれるのか?綺麗事はよせ」

   


   そう話す彼の後ろ姿は泣いているようだった。


   窓の外の夜空の月は、青く冷たく輝いていた。

   それはまるで彼の悲しみを癒すように、美しく光っていた。