高校三年生の冴香は、隣街の工業高校に通う智樹と恋人同士。心配症の智樹は「いつでも俺を呼んで」が口癖で、毎日自転車で、冴香の送り迎えをしていた。ある日の帰り道、智樹は「これから呼ばれても直ぐに行けない」と冴香に告げるが……?
青い春の淡い恋を思い出して頂けたら幸いです★
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「ねぇ、ねぇ、智樹こっち向いて」
私は、智樹の自転車の後ろに跨って、智樹の身体に両手をまわす。
私より体温の高い、智樹の赤茶の髪が風に揺れる。
「ばーか、チャリ漕いでんだよ!」
智樹のいつもの、お小言が頭から降ってくる。
「だって、智樹の顔みたいもん……」
私は、頬を膨らませる。
智樹の背中も顔も両方いっぺんに見れたらいいのに……。
そんな私と智樹のありふれた日常のある帰り道。