ある日、僕のもとに一通の絵はがきが届く。神戸からロンドン、ヨーク、そしてエディンバラへ。「星空レストラン」に集う動物たちに導かれて、僕は、十年前の僕を探す旅に出る。
目を開くと、それまで見えていた早紀の姿が泡粒のように消えた。
代わりにシロナが立っていた。
「迎えに来たの?」
と訊ねると、彼女は黙ったまま、白く細い指で僕の頬を撫でた。
その指先が濡れていて、
ああ、
そうか、
僕は泣いていたんだと気付いた。
『そして僕は旅に出る』より
since 2022.8
菜々地 良