ある日、僕のもとに一通の絵はがきが届く。神戸からロンドン、ヨーク、そしてエディンバラへ。「星空レストラン」に集う動物たちに導かれて、僕は、十年前の僕を探す旅に出る。


目を開くと、それまで見えていた早紀の姿が泡粒のように消えた。

代わりにシロナが立っていた。


「迎えに来たの?」

と訊ねると、彼女は黙ったまま、白く細い指で僕の頬を撫でた。


その指先が濡れていて、

ああ、

そうか、

僕は泣いていたんだと気付いた。


『そして僕は旅に出る』より


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菜々地 良