芸術貴族アネモネ・ヴァレンタイン

作者西谷水

 中世ヨーロッパの街を彷彿とさせる都“芸術の国エレンゲル”。そこは若き芸術家たちが夢を追う希望の街として栄える一方、多くの者が挫折し去っていく夢の跡地だ。
 女貴族のアネモネは、ヴァレンタイン家の兄妹間で争っている当主の座を狙い、自身の”才能を見極める能力”を父に評価してもらうべく、芸術家を求め劇…

中世ヨーロッパの街を彷彿とさせる都“芸術の国エレンゲル”。そこは若き芸術家たちが夢を追う希望の街として栄える一方、多くの者が夢破れ去っていく諦めの場所。

 女貴族のアネモネは、ヴァレンタイン家の兄妹間で争っている当主の座を狙い、自身の才能を見極める能力を父に評価してもらうべく、芸術家を求め劇団グレイ・ロータスに目をつける。

 劇団の看板役者であるアルバとキアランは、一か月後に控えた演出家グレイの引退公演に向けて練習を始めようとしていたが、グレイの失敗を目論むスターハート家の女貴族ミハイラにアルバを主役から降ろすように命令される。しかしグレイは、配役を変更せず支援者であるスターハート家と対立し、アネモネに資金援助を求めた。アネモネが援助の条件として要求したのは、芝居でヴァレンタイン家に劇団の価値を認めさせることだった。

 その後劇団は、ミハイラとアネモネの失脚を狙う兄妹からの妨害や演出家グレイの病死、ミハイラの劇団に対する本当の思いと葛藤を乗り越えて舞台を成功させる。

 劇団は、ヴァレンタイン家のお抱えとなり、アネモネは父に自らが当主に相応しいことを証明したのだった。