田上優里は、17歳の春。
友達の亀ちゃんの好きな人「田川」君と同じクラスになって隣の席になる。
最初は亀ちゃんの好きな人だから……と、恋愛のキューピットになるつもりで田川君と仲良くなった。でも、一緒に時間を過ごすうちに、段々と田川君の明るくて優しい人柄に惹かれ始めてしまう。
でも、優里には密かに付…

出会いは高校2年の春

友達の好きな人が、私の隣の席になった。


桜が舞い散る4月の事だった。

「クラス替え、どうなるかなぁ?」

「同じクラスになると良いね~」

高校に入学して、何となく仲良くなった私、田上優里と亀山みどりちゃん。そして安藤理恵ちゃんに大城夏美ちゃんの4人で会話しながら学校への通学路を歩いていた。

地元でも成績が平均的な公立学校である我が緑ヶ丘高等学校は、小高い山の上に校舎がある。

しかし、山に上って校舎があるのではなく、山自体が校舎になっているので、校門に入って下駄箱があるのだが、下駄箱からひたすら階段を上ると校庭と校舎が現われるのだ。

お陰で、この学校に通って痩せたような気がする。毎日、校庭までの階段をひたすら上り、その上にそびえ立つ3階建ての校舎に到着する。

しかも、地下に当たる部分にも教室があるので、移動はひたすら階段との闘いだったりするのだ。

ちなみに校舎は1階が1年生、2階が2年生、3階が3年生となっていて、学年が上がる毎に、成績順にクラス替えがされる。

上から、有名大学進学を目指す特進クラスが1組で、学年の成績優秀者が集められている。

2組から5組は、大学進学組や短大、専門校組が集まり、6組が就職希望の商業簿記3級を勉強するクラスに分類されている。

まぁ、平均的な成績の場合は、3組と4組のどちらかになるので、私達が同じクラスになるのは1/2の確率な訳だ。

「でもさ、もしたまちゃんが田川君と同じクラスになったら、座席は絶対に隣だよね。良いなぁ~」

通学路を歩いていると、亀ちゃんこと亀山みどりちゃんが溜め息混じりに呟いた。

ちなみに田川君とは、亀ちゃんの片思いの男子の名前だ。

「え~!そんなのわからないじゃない?」

笑って答える私に

「案外、亀ちゃんの予想が当たったりして」

と夏美ちゃんが笑って言うので

「ナイナイ!万が一、同じクラスになって隣の席にでもなったら、私が亀ちゃんのキューピットになってあげるよ」

そう答えて笑っていた。

そんな私に理恵ちゃんが真顔で

「あんた……マジにそうなったら、ちゃんとキューピットになりなさいよ!」

と釘を刺されてしまった。

この時の私は「少女漫画じゃあるまいし、そんな都合の良い話がある訳ない!」と軽く思っていたのだ。

しかし、クラス分けの発表の後、黒板に書かれた座席表を見て絶句した。

「嘘……」

そう呟いた私の肩に、私以外同じクラスになった3人はニコニコと笑顔を浮かべ、夏美ちゃんと理恵ちゃんは私の肩に手を置くと

「キューピット、ファイト!」

と呟き、亀ちゃんは私の手を握り締めると

「たまちゃん、頼りにしているよ!」

そう言って微笑んだのだ。


私、田上優里。

高校2年の新学期で、亀ちゃんの恋のキューピットになる事が決定しました。