唯織くんは素直にデレない。

――――１年前

桜舞う、

県立　南爾河岸（なにがし）高校　入学式。

「ちょ、琥太朗（こたろう）っ！　どういうことだ！？　

この学校に、あのコがいるっ！」

「え、あのコ、って４ヶ月前に唯織（いおり）が助けたっていう

あのお嬢様学校の彼女のことか？」

「え〜！　アンタがずっと紬生（つむぎ）ちゃん、紬生ちゃんって言ってた、あのコ！？　スッゴイ、事情は分かんないけど運命（ウンメー）じゃん！　話しかけてきなよ！」

「いやいやムリムリムリ、カンタンに言うな、朱莉（あかり）。

覚えられてなかったら？　俺恥ずかしくてもう二度と紬生ちゃんに話しかけられないよ？　いやぁも、まじムリムリムリ！　……ちょっと行ってくる」

「行くんかい」

「話しかけたい気持ちの方が勝ったみたいだな」

「……あなたは、あの時の……」

紬生ちゃんがっ！

俺を覚えてくれてたっっ！

行け、唯織！　

友だちになってくださいと言うんだ！

はい、せーの！

「……テメェ、ンなトコでなにしてやがんだ。

なにまた俺の目の前に現れてんだよ！　目ざわりだっつーの！！」

「……アイツバカでしょ」

「間違いなく」

唯織くんの、スナオジャナイライフは

ここから幕を開けたのでした―――――

2023年5月31完結☆