私は、自分の顔が嫌いだ。
腫れぼったい一重の目に、少し膨らみ丸みを帯びた鼻先。そしてタラコのように分厚く、めくれあがった唇。顔は面長で、テレビでよく映るあの子や最近話題のあの女優さんのように輪郭がくっきりと浮かび上がる訳でもない。
もちろん可愛くなる努力はした。
中学生になるとぱっちり二重に憧れてアイプチを始めた。高校生に上がると色素の薄い華奢な友達に勧められたリップを買い、初めて唇に色を付けた。それから化粧に興味を持って道具一式を揃え、独自のやり方で顔を偽ることもおのえた。
でも、だめだった。
汗をかけばシールタイプのアイプチはとれてしまい、元の重たい一重に戻る。ならば塗るタイプではどうだと物を変えるが結果は変わらず、接着した部分がふやけて何ともいたたまれない状態になってしまう。また、元の目が小さすぎるせいか涙袋の線を書いたところであまり変わらない。唇はみっともないくらいにめくれ上がっていて分厚いのでその見た目を変えるためにファンデーションをつけて元の色を消してからリップをつけていた。しかし毎回ファンデーションをつけているせいか、唇から水分はなくなり皮はめくれ、血は滲む最低のコンディションになってしまった。
せめてこの大きな顔だけでも隠せるようにと小洒落た美容院で髪を切ってもらい、美容師さんのおすすめで今流行りのウルフカットにしてもらった。聞けば輪郭の部分が隠れて小顔効果が期待できると言う。
カットが終わり仕上げのセットまでしてもらって上機嫌で家に帰った私は真っ先に洗面台の鏡を覗いた。少しはマシにはなったであろうと期待を込めて覗いた先には輪郭が隠れたせいで顔が縦に長く見え、面長が強調されている醜い自分が写っていた。
何をしてもどう足掻いても私は醜いままだった。
口元が残念なあの子は目元がぱっちりとしていて綺麗な並行二重だし、良くも悪くもない貧相な顔立ちのその子は横から見ると、すっと鼻筋が通っていて横顔が整っていた。
私にはそんな誰かから羨まれるポイントなどひとつも持っていなかった。いくら探したところで、いつも鏡の中にいる自分はお世辞にも可愛いと言えない残念な女が見つめ返してくるだけだった。
そんな自分の悪いところばかり見えてくる生活が16年も続くと、そろそろもういいかと、私はこの世から消えることを選んだ。