五つの夢幻泡影

作者喜和希望

この春から高校一年生になった主人公
箕川哀翔《みかわ あいと》。
自身の病気と学業を両立させようと日々を過ごしているが、そんな彼の前に現れたモノ達とは一


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一遠くでテンテテンとアラームの音が鳴っている

目を覚まさないと…一


憂鬱な朝。毎日毎日、今日が来なければと願う日々だが、そんな思いは虚しく、鉛のような身を起こした。


「はぁ…今日も遅刻になりそうだな…。」


僕は、今年の春から高校1年になったばかりの

"箕川哀翔"《みかわ あいと》。

元々身体が弱く、精神的疾患も患っているのもあり学校には遅刻で登校する事が多い。

毎朝、目覚めの悪い朝を迎える度に、身体も心もズンと重くなる。

そんな今日も、学校へと登校するために準備をしているのだけど

この日はなにか いつもとは違うコトが起こる気がする そんな感じがしたのだ一



朝食も食べ終え、身支度も済ませていざ学校へと向かう。

《2時限目の授業なんだったっけ……?数学じゃないといいけどな。 授業中お腹痛くなったりしたらどうしよう。これ以上休んでしまうと単位が危ういし……》


そんな事を考えながら学校へと走っていると、段々と視界が狭窄しふらついてきた。


まただ一


《もう目の前の校門をくぐれば学校なのに……なんで今!!》


心做しか呼吸も早くなってきている。元々、身体が弱いのもあるが、恐らくストレスからくる発作の影響もあり、僕はその場に蹲ってしまった。一度なるとしばらくは収まらない。 幸い、今の時間帯は人通りが少ない為、このような姿を見られることはないだろう。


ハァッはぁ はハッハァッはっハッ一一


過呼吸は収まるどころか酷くなる一方で動くことも出来ない。手足にも痺れの症状が現れた。

もうこのまま意識を飛ばしてしまいたい。


なんて事を思っていたとき一


「あの大丈夫ですか……!? その制服、うちの学校のモノ……もしかして1年か??

とにかく動くことはできー」


"!?"


動くことはできるかと聞いたのだろうか。

ただ、このような状態で動けるわけなんてなく、僕は力なく首を横に振った。


「分かった。少し動くが、もうちょっとだけ頑張ろうな」


男はそういうと、僕をひょいっと軽々しく背負い校舎の中へと入っていった。



《ッ何処だ…ここ》


目覚めるとそこは、黒い点々とした柄の天井。少し目線を下に目配せると、布団がかかっていた。


《もしかして、先程の男が保健室まで運んでくれたのだろうか……。また人様に迷惑をかけてしまった》


自己嫌悪に浸っていると、隣のレースカーテン越しから誰かが話す声が聞こえた。


「お前、まだ此処に居たのかよ。いい加減キョーシツ戻れよな?」


「しょーがないじゃない!!今日はホントにたまたま体調が悪くて此処に来てるの!!

余計なお世話よ」


男の方は先程、僕を運んでくれた人と同じ人だろう。ただ、キンとした声の女性は知らない人だ。


"今日はたまたま"ということは、いつもはサボっているのか…??


「んで、さっきの男は誰なのよ。見た感じ、すごくちょーし悪そうだったけど??アンタなんかしたの?」


「は?する訳ねぇだろ。お前だって分かる癖にごちゃごちゃ言うな。

校門前で、具合悪そうにしてたからここまで運んだだけだ。」


キュッキュっと上履きの歩く音がこちらの方へと近づいて来ると共に、レースカーテンが開けられた。


「おっ、目覚ましたか!!体調は大丈夫か??

うるさくしてごめんな。」


《そう心配してくれた男は間違いなくさっきの男だ。

髪の毛の色は茶髪。左耳に妙な形のピアスを付けている。見た目はチャラそうだが、人は見かけによらないな……》


「あっはい。少し症状も落ち着いてきました。

先程はどうもありがとうございました。」


キーンコーンカーンコーン......一


僕の頭上にあるスピーカーからとデカいチャイムが鳴り響いた。


「もう3時限目が始まるじゃねぇか…!!すまん、また様子見に来るわ。ゆっくりしてろよ?

それと、黒川!!お前はもう授業に戻れよ」


「あーはいはいはいはい。またねー」


そう言って、"黒川"という女性は男を追いやった。


「はぁ~~。何なのよアイツ。ムカつくわ。

アンタもそう思わない?」


「えっ!?あ、あーはい……??」


なんて急に話しかけれた。僕からしてみれば全然ムカつくような人には見えなかったけどな。


「あ〜あ。ほんと学校なんて無くなればいいのーにねー。なーんの為に行くんだか。

高校に入学してから分かんなくなったわ」


「……少しその気持ちわかりますよ僕も。」


「はっ……??アンタみたいな優等生が?」


「優等生かどうかは分からないですけどね。

僕も、昔から身体が弱くてちょっとしたことで体調崩れるし、そのせいもあってか運動も出来ず、生活にも支障で出しまうんです。

学校にも友達と言える人もおらず、勉強だけして帰るだけの日々の他にも、もう少し特別なことがしてみたかったです」


やばい…すごい形相で僕を見てる。言いすぎたこれ絶対言い過ぎちゃったやつだ……!!


「へぇ~…そっか。そうなのね。アイツが気にかける理由が少し分かった気がするわ。」


そう言いながら此方に近づいてくる黒川さん。


《え怖い怖い!!殺される?? 無理なんだけど…!!?》



「ねぇアンタ。さっき友達いないって…

そう言ったわよね??」


「え??あっはい…特には。そのような友達という関係と呼べるような人は居ません…!!」


こんなこと大声で言うべきじゃないんだろうと思っていても反射的に声が出てしまう。


「じゃあさ一......」



その瞬間、身体が前に引っ張られた感覚がした。


前を見ると黒川さんの顔が間近にある…!!


しかも苦しい…!!ネクタイ引っ張られてるし!!


「あ、あの。く、黒川さん…??苦しいのでネクタイを離してくれませ一


「……ってよ」




「へ???」




「私と信友になってよ」





「え?」

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