1.
やけに色白な女だと思った。
細い腕に傷ひとつない指先、綺麗に櫛の通った黒い髪。
彼女を色で表すなら、間違いなく 白 だ。
彼女は和泉 響華(いずみ きょうか)だと名乗った。昔から身体が弱く、こもりがちだったと担任は言った。今日も病院から登校してきたそうだ。そんなやつが、なんでまた学校なんかに…
「では、和泉は園田の隣でいいか?」
「はい」
透き通るような、されどすぐに消えてしまいそうな声で返事をし、俺の隣に座る。
ひとつ、勘違いしないでほしいことがある。
俺は別に教室の後ろのほうで窓側の端の席に座っているわけではない。むしろ逆だ。一番前の廊下側の列からひとつ窓側に寄った席が俺の位置であり、先にあげたいわゆる主人公席とは程遠いところ、その隣に和泉はきた。すぐに教室からでて保健室に行けるように、なにかあったらすぐ教師に言えるように、という配慮の結果からだろう。冬は一番寒い席だというのに…。
彼女は身体が弱いとは言われているが、それを思わせないぐらいによく笑った。白い顔に薄い桃色がかかる。彼女の笑顔に、俺は目が話せなかった。
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