私は彼が大好きだった。
愛していた。
でも、それは私の欲しい「愛」ではなかった。
私はそのことに気づいていしまった。
「ずっと、誤魔化し続けられたら良かったのにね」
上を見ると、闇を突き刺す星が
下を見ると、濁りを隠す人工的な光が世界を照らしていた。
地上は物で溢れている。お店に行けばある程度のものは売っている。
一般人からしたら「お金持ち」である少女の家に居れば欲しい物は望めば大概のものは手に入った。
けれど、少女の手はいつも空だった。
空っぽの心が映す彼女の眼には全てが虚しく見えたのかものしれない。
だから、彼女はビルの屋上から飛び降りた。
飛び降りる姿は背に翼を生やしているかのように軽やかだった。
だが、当然人間である彼女の背に翼はない。
真っ逆さまに落ちていく彼女の姿を少年は絶望の表情で見つめた。
見つめることしかできなかった。
「死ぬな」とも言えず
屋上に立つ彼女の手を掴むこともできず
飛び降りる彼女に駆け寄ることもできず
死を選んだ彼女を少年は世界に絶望した。