知佳
先の読めない展開と圧巻の文章力
ある日、主人公時雨は怪しげな天使ルシエルと出会い、自分が死んだと告げられる。
物語はそこから始まるのですが、これは本当に始まりに過ぎないな、と思います。先の読めない展開、短いと思わせない圧巻の文章力。背景・心理ともに描写がしっかりとしており、物語にぐっと引き付けられ、その中に入り込んでしまいました。またキャラ一人一人が個性的です。個人的にはサディンとサタンが好きです。サタン、凄い良い味出してますね! 皆のやり取りに顔が綻んでしまうこともしばしば。
また、物語自体が壮大であるにも関わらず、その中で描かれている友情がとても素敵で、切ないと感じるシーンも多くありました。ただ、やはりページ数の問題からか、少し時雨たちの心が簡単に通ってしまったような印象も受けました。しかしながら、この物語の完成度の高さには脱帽します。
それと世界そのものの設定が個人的に好きなので、読んでいてとても楽しかったです。
読後の何ともいえない、胸に広がる切なさと温かさがたまりません。命や友情など、大切なものを教えてもらいました。
本当に素敵な作品をありがとうございました。