麻井深雪

世界は守られるべきものなのか
世界に審判を下す力を持つ、「アーシアの愛し子」の名を持つアリシアの世界を知る旅。

国から見捨てられた貧しい町や、国に反抗する町。
アリシアが知らない世界の闇の部分が国に反抗しているミストの町と関わることでじっくりと描かれています。

その中で運命は国の策略通りに動いていき、己の無知と無力に何度も打ちのめされるアリシアに胸が痛みました。
強大な名前を持ちながら、その力も考え方も普通の少女と何ひとつ変わらない。そんなアリシアだからこそ、読者は共感し、これ以上悲しいことが起こらないようにと願うのです。

どこまでも残酷な運命に、間違っていると分かっていても救えない命に、

「私は、いつか、この世界を壊してしまうかもしれない…」

アーシアの愛し子としての悲痛な声が痛かったです。
アリシアは旅の終わりにどんな審判を下すのか。
この世界の結末を見届けたくなりました。

今回の章では前回になかった登場人物の恋愛感情にスポットが当てられていて、サフィアやトレスの叶わない想いに命を賭して戦う姿にはただ感動しましたし、動き出したアリシアの恋の行方にも注目です。