逢崎 奈零
直線の感情と、屈折した現実
「 ユ イ 」
今日も彼が、私の名前を呼ぶ。
純粋に幸せだった。何も知らなかった。彼が抱いていた「好き」は、私が望んでいたものとは違っていたなんて。
全18ページとは思えない程のお話の密度の高さに、読み終えた今、驚きの感情でいっぱいです。
読んでいる側も思わず胸が苦しくなってしまうような描写、物語の展開に、特に強く惹かれました。時間軸の移動にも違和感がなく、スムーズに読み進めることが出来ました。
作品の中で非常に心に残ったのは、《『特別』っていう言葉に意味が一つしかなかったら良かったのに。》という言葉。ユイの想いが凝縮されている一文な気がして、何度も目で追ってしまいました。
個人的には、彼だけに固有名詞が無かったところが凄く良かったです。
実はこのことに気付いたのは、このレビューを書いている途中で「あれ、彼の名前なんだっけ?」と思い、読み直した二回目だったりします(笑)一回目の時には気付けませんでした……。作者様に感服。
綺麗な文章で、読み始めてすぐに作品に引き込まれました。素敵な作品をありがとうございました。