久遠マリ
物語から読みとくもの
やはり、私は最後までセリーダが好きになれませんでした。
何故か?
それは王家の娘であるにも関わらず、つまらないからと会議をサボったり、想いを寄せる人が他の女性(カトラスとフィリオルなのだけれど)と親しげにしているところを見て後先考えず森の中に駆け込んだり、ラストで戦争のない平和の為と武器所有を禁じたりしたことにあります。
事が成った後のことを常に考えていなければならないのが政治家であると、私は考えています。
他国の情勢、民の不満、身近な人間の言葉に耳を傾けるという行為も人の世をある程度安定させる為に必要。
ネルヴァ国内は暫くの間、混乱するかもしれません。
鍛冶屋は廃業、兵士は解雇、鉱山就労者も帰宅。ビジネスの一部が崩壊し、しかも別のもので建て直さなくてはいけない。確かに魔物による脅威はなくなった、しかし果たして貴女にはこれが見えていましたか、人間による経済的脅威は残っていますよセリーダ?
私にとって物足りないのは、ネルヴァの国家としての深みなのではないかな、と。
しかし、この作品は作者さんの愛情が隅々までみち満ちた、本当に素晴らしい物語なのです。