この世界を隔てるものは、国とか星とかだけじゃないんだってことは、意外と世間の人には知られていない――


 舞台は、鏡を挟んで裏表に存在する世界。

 「裏」の世界からやってくる“シノノメ”は、「表」の世界の人間を記憶ごとつれさってゆく。

 この事実を知っているのは、シノノメ退治に役立つ力をもっている人物のみ。


 そんなふたつの世界のはざまにて、少年は執拗に繰り返す。

 「ぼくは、ぼくのことを知らないんです。ほかのなによりも、そしてだれよりも」


 拍手お礼短編として書き始めた連作小説です。


(2011.7.14~)