好き、って


ほわほわ甘くて


どこか



ほろ苦い。








平凡な女子高生―楠木 千春―×人気歌手―Rui







二人が懸命に紡いでいくのは


不器用で


くすぐったくなるくらいの純愛









恋の始まりは、通学電車の中。


いつも隣の駅から乗ってくる、


優しい鳶色の瞳をした人。


私の小さな夢は、




―「…けほっ、んっ」



あ、また咳してる…。




いつもマスクをして咳をしてる、


そんな彼に。


オレンジの飴をあげること。





伝えなくてもいい。


伝えられなくてもいい。


ただ、一度だけでも話してみたい。






―「飴、ありがとう」


―「ふふっ、いつも同じ電車だよね」


―「おはよう」






私の想いに、終わりはなかった。


少しずつ風船みたいに膨らんでく想いは、


やがて空に舞い上がって行くの。





―すき、すき、すき、すき。





全ての想いが1つに繋がったとき。


私は、


駆け出すの。





―「…っ、あの…っ!」










“orange”





いつかあなたに渡せますように。


飴と、この大きく膨らんだ想いを。