まぎれもない傑作。
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寂しくて哀しいけれどどこか温かいリズムがそこに流れているような、そんな気持ちでした。

たったひとりの家族である楓を何年も追いかけ続ける、純粋な柚希の姿に、胸を打たれました。

ひたむきさや健気さが胸を打つ、酷く切ない小説です。


後書でおっしゃっていましたが、どろどろといった展開は全くないように思えました。むしろ、わたし的には、後味は爽やかだとさえ思えます。

紗代、すばる……どちらかと言えば少ない登場人物たちがみな生きていて、感情が流れ込んでくるかのようでした。


優しさは時に酷く残虐だったけど、そこに確かな愛を見出すことが出来た楓は幸せなのだなと、わたしは思いました。

おそらく中心人物であろう楓のどうしようもない葛藤が、物語の切なさを二倍にも三倍にも倍増させました。


どうか、たくさんの人にこの小説を読んでもらいたいです。

ここで断言できます。まぎれもない、傑作です。そして、作者さまにしか書けない、素敵なお話でした。


『No you, no life』

タイトルがこのお話を端的に表しています。

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