思春期は多感な時期であり、自分の存在意義がわからなくなると同時に自分自身を見失いやすい、と聞いたことがあります。それでも大多数の人は”普通”に学校生活を送っているように振る舞う。けれどその”普通”の路線から外れてしまう人も中にはいるわけで。そんな人をカーストにとらわれている人々は、仲間意識が壊れる為、「おかしい」と決めつけ、除外しようと躍起になる。感性が他の人とは明らかに違う、そんな舞子は、同じであることや共感を必要以上に求める狭い組織で邪魔者扱いされ、煙たがられていました。人間関係なんて脆いもので、気づけば小さな綻びが崩壊へと導く。そんな残酷さと枯渇した愛の詰まった世界は彼女の深淵そのものでした。息苦しくて、ただひたすらに窮屈で。どこにも居場所がなくて。呼吸さえもまともにできない。人より尖っている部分があったが故に不幸になったけれど、裏を返せば、それは彼女の”武器”になる。どうしようもない世界の中で見つけた一筋の光は、微かだったけれど、縋りたくなる確かな強さがあった。一読者として拝読していたはずが、気づけば物書きの視点からページを捲っていて。示唆に富んだこの作品は衝撃的で、美しくて仕方がありませんでした。発想の転換。その素晴らしさには目が眩みます。舞子の気持ちを推し量ると、涙が零れ落ちるほど胸が張り裂けんばかりになりましたが、独りになれる夜だけが彼女の心の拠り所なのだとしたら、その夜が永遠に続いてくれることを願います。そしていつか、希望を掴み取れるよう、明音に出逢えるよう、祈っています。
 素敵な作品をありがとうございました。