Teller

人間を好きになっていく作品
緻密な状況描写、スリル満点のバトルシーンに、頁をめくる手を休めさせてくれない数々の謎、伏線。

 それでも自分が特筆したいのは、作者さんがあとがきで述べていたようにこれが「人間大好きな作品」である事です。

 辛い過去、過ちを犯した自分。
 そんな過去や自分自身との葛藤が、魔族という力量的に優位にある者たちとの戦いの最中で顕在化し、主人公たちの前にもう一つの敵として立ちはだかる。

 嘆いたり、逃げたり、知らない振りをするのは簡単。
 しかしそれを真っ向から受け止め、乗り越えていく事で人は成長するんだと改めて痛感しました。

 そのような意味でこの作品は「人間を好きになっていく作品」だったと思います。