繭結理央

妄想巨編のプロローグ?
いつも通りの帰路、いつも通りの電車内、いつも通りの風景と疲労に包まれ、いつも通りに駅舎へと降り立つはずだった彼女の頭上から降ってきたものは、1枚の紙。

1枚の紙がくれる、小さな出逢いの物語。


頭上から紙が降ってくること自体は、別に稀少体験というわけではない(実際、舟を漕いで参考書などを手放し、慌てふためく立ち寝の高校生はしばしば見かける)。

が、稀少だったのは彼女の行動のほう。

なかなかヤるなオヌシ……彼女の積極性に対して、涎を垂らす女性読者も多いのではなかろうか。

しかし、物語は予想外にもドライな結末を迎える。これによって、女性読者の大半が己の妄想力を鍛えるハメになる(多分)。

即ち、読者の“妄想巨編”のプロローグを買って出てくれる佳作ともいえるだろう。


個人的には、タイトルになっているぐらいだから、もっと“加法定理”をプロットに組みこんでも面白かったかなぁと思った。

サインとコサインがαや√でタンジェント……魔獣を召喚するスペルにしか見えない無学な私がなにを欲張ってやがんだという話だが。