弟は、真っ白い。
だから汚れやすい。
ある日弟が汚れて帰ってきた。
真っ白いTシャツに真っ赤な汚れをつけて帰ってきた。
「お姉ちゃんの事、引っ掻いたから」
その真っ赤な汚れは私が可愛がっていた野良猫の血だった。
「お姉ちゃんを傷つけたからあの猫はいらない」
弟は、真っ白い。
だから、だからーーー。
朝起きるとやけに静かだった。
少しだけ嫌な予感がした。
部屋を出て階段を降りると、鉄の臭いがした。
鉄と生肉が傷んだ様な臭い。
リビングの食卓にはパパとママがテーブルに突っ伏していた。
そして血がポタりポタりと静かに垂れ落ちていた。
「おはよう」
弟がいつもと変わらぬにこやかな表情を浮かべ朝食を手に持って立っていて、両親が突っ伏しているテーブルに並べる。
その手は真っ赤に汚れていた。
弟は平然とした顔で朝食を食べていた。
それから12年後ーーー、
「ただいま」
「おかえり」
今日も弟は汚れて帰ってきた。