麻井深雪

何気ない日常を大切にしようと思える
胸キュン恋愛小説ではありません。
まるで純文学。

丁寧な描写から伝わるアパートでの生活での匂い。
付き合いの長い二人から伝わる生活感は胸キュンからは少し遠いかもしれません。

けれども、とてもリアル。

じんわりと伝わる由梨の結婚に焦る嫌な感情。
彼の返答に納得できない苛立ち。
そして合コンに参加するときのどこか惨めな気持ち。

例を挙げたらキリがありません。
そのどれもがとにかくリアルで、大人の女性ならば誰もが共感できるのではないでしょうか。

そんな嫌な流れの中で回想される正志との出会いの描写がとても優しくて、線香花火の描写と相まって温かくて…。
展開の持って行き方もすごく上手いです。

その後のアパートでのやり取りも、正志がドラマのように合コン会場まで乗り込んでこなかったこともとても良かったです。

最後まで作品の雰囲気を損なわずに、どこにでもある日常を感じさせてくれる。
そしてそれこそが幸せなのだと。

レベル高いです。
文学作品をお探しの方はぜひご一読を。