由梨佳

問題意識の高さ
いじめを題材とした携帯小説はごまんとありますが、これはその中でもトップレベルの作品のひとつだと思えました。

残念ながら、携帯小説の中でいじめや自傷行為の重さを表しきれずに、それらを単なる物語の要素としか扱えていない作者さんもいるのが事実です。

そんな方こそ、一度この小説を見習って欲しいと思います!



いじめの被害者や加害者だけでなく、クラスの傍観者や周りの大人達の視点まで書かれている抜け目ない点。

いじめの問題に加え、精神を病んだ背景にある主人公の家庭環境も合わせて描写されている点。

高校で離れ離れになった幼なじみと再会して自分との差を感じ惨めに思ったシーンや、味方ができても最初は素直に頼れなかったりといったシーンでの主人公の繊細な心情描写。

どれも、作者さんのしっかりした文章力や構成力、ハイレベルな表現のなせる技だと思います。

最後にある考察ともいえる部分を読み、作者さんのいじめに対する問題意識の高さを感じました。

問題提起、テーマ性、表現力、文章力などどれをとってもよくできた小説だと思えました。