星影 とと

銀空色と黒い猫
国王殺しの罪で追われる王女と、暗い闇の狭間に生きる少年。信じることに不器用な二人が出会い、共に歩き出す物語。

 この小説の秀逸な点は、魅力的なキャラクターが沢山出てくること、そして、そのそれぞれが個性を持ち、丁寧に作り込まれていること。更にその一人ひとりに重要な役割があり、誰ひとりとして遊びのキャラクターがいないことだ。これは、思いつきでお話を綴っていてはできないことである。

 恋愛ファンタジーと銘打ってあるが、王女と少年が出会うまでには一悶着ある。「ただなんとなく恋愛を書きたかっただけ」のファンタジーとは違い、きちんと筋道を立てて、キャラクターの心を軸に話が展開していく。そのため、切なさと綺麗さと、深刻な暗部が巧みに共存する世界観に、どっぷり浸ることができると思う。

 王女の髪は銀色、目は薄いスカイブルーという設定。作中でも銀とブルーが多用される。それも、しっとりとした雰囲気を彩るのに一役買っているようだ。

 王女と少年。二人は、混沌とした国の未来を照らす光となれるのか……!

 とにかく切なキュンしたい方、王道ファンタジー好きな方におススメ。