にとは
緊張感と躍動感と安堵感
台詞の応酬も地の文もテンポがよく、すらすらと読める作品です。
龍一は『元』政府の秘密工作員ということもあり、事務所に乗り込むシーンもあまりはらはらしなかったのですが、たくましく頼もしい男性らしさを感じました。
そして愛する美百合のために果敢に立ち向かうその姿は、思わず美百合に嫉妬してしまうくらい龍一の魅力を表していたと思います。
他の方が指摘されている視点の移動については、すらすらと読めるからでこそ気になってしまうのではないでしょうか。
こちらの作品は三人称で物語が進行していますし、視点にそこまで拘らなくてもいいのではないかと私は考えます。そして視点が変わることにより、作品内における言葉のやりとりの重要さや、最後のシーンの安堵や感動も深く味わえるように思えました。
龍一は最初から最後まで美百合を愛しているけれど、美百合が龍一の心情を読み取れず、事件が終わった後に龍一との関係に不安を感じているところは特に視点移動の効果が出ています。
龍一に微笑みかけられる美百合の姿を思い浮かべ、「良かったなあ」と素直に感じることができました。