小泉秋歩

その小説を読んでしまったら、もはや逃げられないのだ。
女流小説家・沖千鶴が、赤いリボンを全身に巻いて飛び降り自殺した。その死に方は、彼女が書いた小説の一場面に酷似していた。
やがて、数人の者の携帯電話に奇妙なメールが届く。
そこには『連鎖』というタイトルの小説が。
その小説には、不気味なことに、読者自身の現状や少し先の未来を予感させるような内容が書かれ、未完のまま終わる。
【続きが読みたい方はこのアドレスを誰かに転送してください】
引き込まれるように転送する読者達。
そうして、恐怖は連鎖していく――

ケータイ小説をモチーフとした、ミステリアス・ホラー。
チェーンメールを用いたホラーは最近の定番ですが、そこにケータイ小説を絡めたのが興味深いです。「ケータイ小説の中のケータイ小説」という入れ子構造が、読者と登場人物の一体感を生み出し、恐怖感をぐっと盛り上げています。
文章も非常に洗練されていて、確かな描写力が想像をかき立ててくれます。

ホラーですが、ただ不条理に怖いだけではなく、沖千鶴の死を巡るミステリーの要素もあります。
今後は、古書店の店主・笹森秋秀の活躍からも目が離せません。期待が持てます!