咲 一葉

幸せの鐘を鳴らす方法。それは――
一人で何もかもを、背負い込んでしまわなくてもいい事。

彼女は、上司でもある葉山とその周りの人達によって、それに気付かされていく。

主人公は佐藤美月。
表紙にもあるように、彼女は齢十八にして勤続年数三年。
…そこから導き出すは、あまりにも幼くして社会に放り投げられた現実だ。

周囲からの憐れみや蔑み、色眼鏡で見られる日々の中、それでも負けないと踏ん張る姿勢。
そして何よりも、この歳にして仕事に対する熱意と誇りをしっかり持っている。

丁寧に綴られるそれらに、私達は胸を打たれることだろう。そしてこの物語の大人達にも、美月の姿は必ず目に届く。

境遇を理由にはしたくないと、がむしゃらに大人になろうと生き急ぐ彼女に、手を差し延べたくなる。

舞台はホテル宴会。
細部にわたって描かれる実務内容に、この業界の者が見れば最早あるあるモノ。…かく言う私も宴会スタッフ。調理場ピリピリには思わず「分かるわ~」と声が漏れた。

誰よりも必死に生きてきた美月に与えられたのは、周りに頼る事と、甘えられる存在。
そうして彼女に、幸福をもたらした。

本当に素敵な作品。