「半年間だけ俺の彼女になってよ」
それまで友達だと思っていた男は私に笑いかけながらそういった。
「……意味わかんない」
私の第一声はそれだった。
「そのままの意味だけど」
そいつは何が聞きたいんだと言わんばかりに首をかしげた。
容姿端麗で、世間では『イケメン』に部類される奴だからこそ、絵になる。
「…彼女とか、彼氏とかってそんなのどっちか一方が好意をよせてから始まるものでしょ」
「俺は、君のこと好きだけど?」
そういいながら男はにっこりと笑った。
「……その好意はもちろん、“友達として”でしょ?」
「もちろん。」
男は当たり前だ、というように言い放った。
「だけど、お互いメリットはあると思うよ?ほら、俺らって性格も合ってるしツボも結構似てるし?」
男はおどけるように言った。
「卒業までの半年だけでいい。俺と付き合って」
男は再度そういって笑う。
夕闇が窓から差し込んでいて男の顔は見えなかったけど、口角を釣り上げてるのが見えた気がした。
「…いいよ」
私も口角を釣り上げてそういった。
そうして私と彼の半年間限定の恋人ごっこが始まった。