事故で両親を無くし、一人暮らしで高校生活を送る文学少年。
その少年は感情があまり無く、感じるにしても人事程度。
悲しみ苦しみ嬉しさ切なさを取り戻していく物語。

もう十分に寝たりていたのだろう。

背伸びをして身体の調子を戻してみるが、繰り返し寝る気にはなれなかった。

どちらかと言うと顔でも洗ってさっぱりしたい気分だ。

カーテン越しの空の暗闇からは、起きる時間でないことを知らされているため起きることは出来ない。

このまま起きてしまえば、通っている高校での授業に支障が出るのは分かりきっていた。

それでもやはり我慢が出来ない少年は、ベット脇のスタンドライトの紐を引っ張る。温かみのある灯りが辺に広がった。

枕元にある本を手に取ると栞を目印に紙を開き、文字を目でたどる。

真っ白な表紙が目を引くそれは、黒い文字で小さく”番樹の柩”と書かれていた。

寂しく生きる男が、人と出会い別れ、その中でまた孤独を知り、独りで死んでいく話だ。

しかし男に悔いはなく、一人で亡くなることに他は長生きをすると感謝をする。孤独を知ったからこその心の思い出と叫びが切なく涙を誘う物語。



(あぁ…もう朝か)

窓から入る赤みかがった部屋に気づいて、立ち上がった。

もちろん小説に栞をはさむことは忘れない。目安では起きてから二時間ほどたったのが伺えた。

手始めに朝ごはんを食べようと

キッチンに行くが、鳥のさえずりしか聞こえない空間はお腹を握り占められる悲しさだけだ。


少年の両親は少年が中学生のときに事故で既に他界をしていた。

故に家庭持ちの叔父にひきとられたが、高校を入学するとともに両親の遺産で一人暮らしをすることを勧められた。突然家に入ってきた人間に居心地が悪かったのだろう。もちろん多少の援助をしてくれる条件付きだ。

なのでバイトをせずとも贅沢をしなければ生きていける状況だった。

しかしバイトをして少しでも貯金したい気持ちもあった。叔父は許してはくれず建前だけの綺麗事を並べたが、それが世間体を気にしてのことだとは誰もがお見通しである。

やはり心配なのだろう叔父宅近くの貸家に落ち着いたことで、働けば周りからは家を出さしておきながら、援助をしない人になってしまうのだ。

(仕方ないことだけど)

毎朝のように考える問答に冷蔵庫からだしたヨーグルトを口に入れることで、終止符を打った。

ただただ一人の時間を味わいながら。