流星

真実の愛情
夏の終りに関東方面に出かけると、街全体に不思議な香りが漂っていました。

そうなんです、これこそがキンモクセイの香り。
私も主人公同様北海道在住なので、キンモクセイの香りは芳香剤などでしか知りませんでした。
街中に甘く漂よう黄色い花の強烈な香りには、かなり驚かされました。

そしてこの作品を読んで・・・花の咲き誇る時間の短さを知りました。
束の間の激しさと儚さ・・・。
主人公二人の愛の形に通じるものがあると思いました。

牢獄のような家、そして街から共に逃れようと懇願する青年。
外の世界に憧れを抱きつつも、これまで築き上げてきた日常を捨て去る事はできず、再び「牢獄」へと引き返していく人妻。

若かった彼にはこれが精一杯の努力だったと思いますが、結局何も変える事ができず、苦い思い出になったでしょう。

キンモクセイの香りは、一度匂いを覚えてしまうと、なかなか記憶から離れません。
その香りを思い出すたびに、彼の心の中には苦い思い出が去来するはずだと思います。

切ない作品でした。