小泉秋歩

僕と「人面疽」の奇妙な友情
ある日、「僕」は左腕に人の顔のような瘤ができていることに気づいた。
人面疽(じんめんそ)という妖怪にとり憑かれてしまったのだ。
人面疽は肉を食わせろと要求し、さもなくばお前の体液を啜うぞと脅してくる。
信じられない事態に恐怖し、困惑する「僕」だったが、やがて人面疽の「ジン」との生活にも慣れてきて――

妖怪と人間との友情をテーマとした、ハートフルな現代ファンタジー。

人面疽のジンは口が悪く、最初のうちは少し怖いですが、次第に憎めない愛嬌のあるキャラクターとして描かれています。意外に気の利くイイ奴なんですよね、これが。こんな楽しい妖怪だったら私の腕にもいてほしい…と、ちょっぴり思ったりして。

また、物語の中盤から登場する「彼女」の気丈な性格が、物語に明るい光をもたらしています。ジンと彼女が少しずつ親しくなっていく様子にも心が温まります。

文章はとても端正でわかりやすく、恋愛と友情の狭間で葛藤する主人公の心の揺れを丁寧に描写しています。
クリスマスの夜に、ぜひ読んでみてください。