麻井深雪
綺麗ごとだけじゃ生きていけない
全うな倫理観をもってすれば、主人公の全てに共感することは難しいでしょう。
何故なら、いきなり浮気相手との体だけの関係から始まり、ステータスだけで恋人を選び、仕事なんてさっさと辞めたいと思っている主人公は、ヒロインとしては打算的で擦れすぎているからです。
女の嫌な弱さが浮き彫りに描かれていて、恋人に振られた時に浮気相手に助けを求めたところなんかは、正直ズルすぎて嫌悪感を覚えました。
だけどそう思うのは自分の中にもそういった弱い行動に覚えがあって、誰もがそれを嫌だと思いながらも抱えて生きて行く「オンナ」であるからだと気づかされます。
結婚相手に安定を求めるのは女性なら当然の心理で、けれどそこにはやっぱり愛も必要で…。
読みながら色々なことを考えさせられます。
身体を売らざるを得なかった過去を持つためにお金に執着するという特殊な設定ではありますが、その設定を上手く使って、等身大の大人女性のリアルな心情を描いた作品です。
ラストに題名の意味が明かされますが、意表を突かれてなるほどー、と感心しました。
恭ちゃんの大人な妖しい魅力も満載で楽しめました。