星影 とと
シンデレラの気持ち
お金も家も家族も仕事も無し。借金あり。そんな危機的状況に陥ってしまった杉山美波。そんな彼女を救った雨沢遊が申し出たのは、嘘の結婚……!?
冒頭のシーンが凄く好き。車のボンネットの上でヒロインを受け止めるとか、なんてドラマチックなんだ! と思いました。そのシーンが絵になって思い浮かぶようでした。
父の借金のせいで、暗い生活を余儀なくされてきた美波。でも、ひとつだけキラキラ光る思い出を持っています。それが、綺麗に話をまとめる伏線の役割を果たしていて、読者にきちんと、納得感を与えています。
また、パーティーで12時が近づくシーンは、シンデレラを引き合いに出していることで、読者の気持ちを盛り上げます。そこで「王子の気持ち」にも言及するところは巧いなぁと思いました。
欲を言うならば、美波が遊と暮らしはじめてからの三週間が、とてもさらっと書いてあったので、そこのとこの美波の気持ちの揺れを、もっと詳しく書くと広がりが出るのかな、と感じました。
読みやすく、丁寧でサラリとした文体で語られる、現代版シンデレラストーリーです。王道恋愛ものが好きな方におススメ!