麻井深雪

誰が読んでも楽しめる
短編ですが、1頁あたりの文字数が多く内容はギッシリ、かなり読み応えがあります。

三人称で書かれていますが、視点は終始、知花のみで進むので三人称に馴染みがない方でも読みやすいと思います。

天然で自分の可愛さにも気づいていないぶ厚い眼鏡っ子の知花。
彼女だけに意地悪な裏の顔を見せる完璧な生徒会長、圭。

ありそうな設定ですが、表情を変えない知花の心の中で、小さい知花が踊ったり喜んだり、独特の表現でキャラを魅力的に仕上げています。
その読めない表情を圭だけが読み取れるという設定も素敵でした。
知花ちゃんの敬語も可愛かったです。

ただ欲を言えば、圭が冷たい態度ばかり取るので、その裏の優しさをもうちょっと読み取りやすくして欲しかったです。
ジャージに着替えた彼女を置いて帰ってしまったり、「来年からチョコはやめろ」の言葉はちょっと冷たく感じました。

上履きを探してくれたのは圭じゃなかったのかな。
もう少し、圭が探したんだと知花が気づく場面が欲しかったです。

安定した文章力と、胸キュン場面が適度に織り込まれていて、誰が読んでも楽しめる恋愛小説だと思います。