アオイ

好きだからこそ相手を解放する……不確かな関係でも、たしかにあった二人の恋愛感情。
最後まで主人公の名前が出てこなかったのに、違和感なく最後まで読み進めることができました。

私は読書に不慣れで読むのが遅い方なのですが、こちらの作品は読みやすく、サラサラ読み進めることができました。

回想場面では、主人公の見ているもの、感じているものが映像を見ているかのように伝わってきて、作中に漂うにおいまで感じられるほど想像が膨らみました。

一級建築士の資格を持った「彼」の雰囲気や表情、喋り方、性格、外見。

恵まれているけど窮屈な気持ちで過ごしてきた主人公の学生時代。

二人が見ている情景が鮮明に描かれています。


作者様は《音楽》と《自由》をテーマに書かれたそうですが、作品内に出てくる曲のメロディーが本作品の中から聴こえてくるような文章と表現がされていました。

終盤で、主人公が現在の恋人を通して「彼」が口ずさんでいた曲の歌詞の意味を知った時に、涙が出ました。

主人公を愛していた「彼」の心。好きだからこそ別れを告げた恋。

今後、主人公と「彼」が幸せになることを願って。

素敵な作品を読ませて下さり、本当にありがとうございました。