繭結理央

よもやの大正解
置き忘れられたモノを咀嚼するには時間がかかる。たとえ、忘れた者が親友だったとしても、親友だから今にも電話報告できるという気安さと、親友だから後日に取りにくるのを待てばいい……とする気安さの、奇妙な葛藤はあるように思う。

偶さか、相手が上司であれば葛藤はなおのこと複雑で、相手に好意があれば煩雑ともなっていく。忘れ物が煙草であっても咀嚼するのに時間がかかるし、胸を締めつける“言葉”であれば狂おしくもあろう。

ある意味、忘れ物とは“罪”だ。

そんなに苦しければ廃品に出せばいいのに……自分優先の人間(わたし)だったら、そんなふうに思わなくもない。どうせまた忘れていくんだから、頻繁に葛藤しててもキリがないよ、と。

だが、めぐみは取りにくるのを待つのだ。よりによって最も気合いの要る作業“待つこと”を、彼女は選択するのだ。


わたしなら断捨離なのにな……。


でも、めぐみは待って正解だった。

なんてこったい。

よもやの大正解。


【アラフォーが
 わたしは待てぬと独り言
 忘れ物なし、待てど暮らせど】