異常な世界と正常な僕。

作者奏太

そうね……

あの音や言葉、貴方は否定するかもしれない。

それでも僕にはそう聴こえたのです。


一体どれだけの誤解で、この迷路は成り立っているのでしょう。

どこまで進めば出逢えるのでしょう。

ほつれた糸のような道。

進めば進む程に大切な物は失い、我を忘れてはもう……


あの成功や感動、未だ忘れてはいないけれど。

貴方が誰だか忘れてしまったのです。


そりゃ思い出そうとしなければ、苦しくも何ともないですよ。

ただ一つ、また一つと道が閉ざされてしまってね。

人知れず嘆息をもらし、僕は引き返すのです。


確か此処からだと少し進めた筈かしら?

きっと初めからね、貴方に共感していれば僕だってこんなに道に迷ってはいないと思うんだ。

でもどうしたって僕には貴方と同じような音や言葉が聴こえなかったから、仕方ないね。


光は在るのに暗かったのです。

そんな僕の頼りない世界。