遠野ましろ
鮮烈・斬新・…そして人の温もり
素晴らしかったです。
ゲームという斬新な設定、作りこまれた世界観。
そこへ、…やはり人間が集まるが故の、またそこに生きる人が「生きたい」と思うがゆえの軋轢や願望。
記憶を無くす薬の流通という形でそれが結実する訳ですが…
誰しも一度は思う、「違う自分になってみたい」という願望。
特に前半は湿っぽくならず、ティーンエイジャーの目を通して軽妙に描かれています。
ユウとナツキの視点の切り替えや出会い方が実に自然で、二人ともに感情移入しながら楽しめるエンターテイメント小説です。他登場人物も魅力的。
個人的には、ラスボスたるティファの心変わりがもう少し長く書かれても良かったかとも思いました。
構成も素晴らしく、何度でも読みたくなる作品です。一度読んだだけでは良さが分からない。
ラストも爽やかなので素晴らしいのですが、家族団欒の時のユウのお父さんの台詞が印象的でした。社会人ならグッと来る筈です。
また読みたいと思います。