身代わり婚〜お義兄さまに囚われて〜

作者砂月美乃

没落華族の娘・菊乃は、駆け落ちした姉の代わりに義兄の冬馬に嫁がされることになった。もう女を信じられないと言う冬馬は、菊乃を半ば監禁しながら、執拗な愛を注ぐ……。

 


 私は、身代わりの花嫁だ。

 お姉さまの罪を、償うための。




 初めてお会いしたとき、素敵な方だと思った。

 どうしてお姉さまがあんなに嫌がるのか、分からなかった。


 でもそれは、ほんの少女の憧れだ。




 今の私は、もう違う。

 身代わりの私は、口が裂けてもそんなことは言えない。


 まるで私が、お姉さまの不始末を喜ぶようなことを。

 まるで私が、それを望んでいたかのようなことを。




 だから、違う。私は必死に首を振る。

 お義兄さまのことなんて、何とも思っていないから。








 このお話は、昭和初期をイメージして書かれています。

 当時の風潮に合わせているため、結婚観や男女、身分や職業などに、現代には合わないやや差別的な表現をしている場合があります。あくまでフィクションではありますが、お好みに合わない場合は読むのをお控えください。