私は、身代わりの花嫁だ。
お姉さまの罪を、償うための。
初めてお会いしたとき、素敵な方だと思った。
どうしてお姉さまがあんなに嫌がるのか、分からなかった。
でもそれは、ほんの少女の憧れだ。
今の私は、もう違う。
身代わりの私は、口が裂けてもそんなことは言えない。
まるで私が、お姉さまの不始末を喜ぶようなことを。
まるで私が、それを望んでいたかのようなことを。
だから、違う。私は必死に首を振る。
お義兄さまのことなんて、何とも思っていないから。
このお話は、昭和初期をイメージして書かれています。
当時の風潮に合わせているため、結婚観や男女、身分や職業などに、現代には合わないやや差別的な表現をしている場合があります。あくまでフィクションではありますが、お好みに合わない場合は読むのをお控えください。